レーザー治療について

最新のレーザー治療

最新のレーザー治療ー1470nmレーザーとRadial fiber

当院では波長1470nm半導体レーザーと全周性照射ファイバー(Radial fiber)を使用した血管内レーザー治療を行っています。波長1470nmレーザーは従来のレーザーよりも生体内の水に対する反応が格段に強く、静脈を短時間で確実に閉鎖することができます。さらに、このレーザーを全周性照射ファイバーであるRadial fiberと組み合わせることによって、再発と合併症の少ない治療が可能となりました。

1470mm半導体レーザー

1470mm半導体レーザー

現在までに使用してきたレーザーシステム
2002年~ 810nmレーザー
2004年~ クールタッチレーザー
(1320nmパルスヤグレーザー)
2006年~ サファイアファイバー
2007年~ 2000nmDPSS、980nmレーザー、
1470nmレーザー
2008年~ 1470nmレーザー+Radial fiber

レーザー治療は痛い治療?ー合併症との戦い

なぜ、色々なレーザーを使ってきたのか?それは、レーザー治療後の合併症を少なくするためです。レーザー治療が始まった頃、レーザー治療は痛みもなく、とても楽な治療だと考えられていました。ところが、実際に治療を行ってみると、予想外に痛みが強く、場合によっては、普通のストリッピング手術より痛みが強い場合もあることがわかってきました。何がいけないのか?痛みのないレーザー治療を求めて、治療機器や方法の工夫が重ねられてきました。鍵となったのは、レーザーの波長とレーザーファイバーでした。

レーザーの波長が重要!ー水特異性レーザー(波長1470nm)

レーザーはどの様にして静脈をふさぐのでしょうか?レーザーというとSFアニメに出てくるレーザー光線を思い浮かべる方が多いと思います。実際のレーザーは、アニメのように直接相手を破壊するのではなく、一旦、当たった相手に吸収されて、吸収された相手がレーザーのエネルギーを熱に変えて発熱するのです。吸収される相手はレーザーの波長ごとに違っています。したがって、吸収される相手とレーザーの波長が合っていなければ、レーザーを当てても十分に熱が発生しません。レーザーが吸収される相手として一番重要なのは水と血液です。現在、使用しているのは水に良く吸収される波長1470nmのレーザーです。水は静脈にたくさん含まれているので、波長1470nmのレーザーをあてると静脈だけを良く焼くことができます。そのため、静脈の焼きむらによって起こる再発や、治療後の痛みが非常に少なくなりました。

レーザーの原理

レーザーの原理

波長と水の吸収

波長と水の吸収zoom


最新のファイバーー“Radial fiber”

しかし、レーザー治療後の痛みと皮下出血を防ぐためには、レーザーの波長だけでなくファイバーの改良が必要でした。静脈にレーザーを直接届けるのはファイバーです。従来は、ベアファイバーという先端を真っ直ぐに切っただけのファイバーが使われていました。しかし、このファイバーでは先端からレーザーが出て、静脈に穴があいてしまいます。次に登場したのが、先端を丸くしたファイバーですが、先端から照射されることには変わりなく、やはり静脈に穴があいてしまいます。
これに対し、Radial fiberは、先端にプリズムがついていて、ファイバーの側面から360度レーザーが照射されます。側面からレーザーが出るため、常に静脈とファイバーが密着した状態で、静脈を均一に焼くことができます。この“Radial fiber”と波長1470nmレーザーの組み合わせによって、初めて痛みや、皮下出血がほとんど起きないレーザー治療が可能となりました。

新しいファイバー

新しいファイバーzoom

Radial fiberの写真1 Radial fiberの写真2

Radial fiberの写真zoom


切らない治療?ー足のつけ根を切らない!

レーザー治療の最大の特徴は、細いファイバーを血管内に入れるだけで治療できる、皮膚を切らない治療ということです。従来のストリッピング手術は、静脈を取り除くために足のつけ根(そけい部)と膝の2ヶ所を切る必要がありました。特に、足のつけ根は、下肢静脈瘤の原因となる場所で、この部分で静脈をしばって切り離す“高位結紮術(こういけっさつじゅつ)”が必ず必要であると言われてきました。しかし、レーザー治療では、膝の部分から細い点滴の針を刺し、その針穴からレーザーのファイバーを足のつけ根まで入れて、中から静脈を焼いて塞いでしまいます。そのため、足のつけ根を全く切らないで治療することができます。
レーザー治療が始まった頃は、足のつけ根を切らない(高位結紮術をしない)とエコノミークラス症候群や再発の原因になるのではないかと心配されましたが、実際はそのような事はなく、現在は足のつけ根を切らないレーザー治療が、標準的な方法となっています。

エコー下穿刺

エコー下穿刺


でも切らないといけない?ースタブ・アバルジョン法の併用

今、切らない治療と言ったのに、今度は切る話です。実は、静脈瘤はレーザー治療だけでは完全に治すことができません。レーザー治療で治すのはふとももの“伏在静脈(ふくざいじょうみゃく)”という太い静脈だけで、ふくらはぎの静脈瘤は小さくはなりますが完全には消えません。そのため、ふくらはぎの静脈瘤にも治療が必要となります。硬化療法という注射の治療を行えば、切らずに治せますが、皮膚にしみのような色が残ったり、治療に時間がかかります。そのため、現在はレーザー治療をする時に、特殊な器具を使って1-2mmの傷から静脈瘤を取り除いてしまいます(スタブ・アバルジョン法)。スタブ・アバルジョン法による傷は非常に小さいので、痛みはほとんど無く、傷跡も目立ちません。

当院のレーザー治療

現在、当院で行っているレーザー治療は、波長1470nmのレーザーに全周照射ファイバー(Radial fiber)を組み合わせた最新のものです。エコーで見ながら細い針を静脈に刺して、ファイバーは膝から足のつけ根に向かって静脈の中にいれ、足のつけ根は切りません。麻酔はTLA麻酔(局所麻酔)で行い、 ふくらはぎの静脈瘤はStab avulsion法で取り除きます。この一連の治療は血管外科医にしかできません。この一連の治療が、現時点では最も楽に、早く、確実に、そしてきれいに下肢静脈瘤を治せる最新の血管内レーザー治療です。

当院のレーザー治療

当院のレーザー治療zoom


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