静脈瘤の代表的な治療には、硬化療法、高位結紮術、ストリッピング手術および血管内レーザー治療があります。ストリッピング手術が静脈瘤の最も標準的な治療です。ストリッピング手術は、静脈の中に細い針金(ワイヤ)を入れて、静脈と糸で結び、ワイヤごと静脈を抜き取る手術です。静脈を抜き去る時に強い痛みをともなうため、全身もしくは下半身の麻酔をしなくてはなりません。そのため、通常、3日から1週間の入院が必要です。
静脈瘤の日帰り治療の代表的なものが、硬化療法と高位結紮術(こういけっさつじゅつ)です。硬化療法は注射の治療で、軽症の静脈瘤には効果的ですが手術の替わりになるものではありません。高位結紮術は、足のつけ根で静脈を糸でしばる手術です。多くの病院で日帰り手術と言っているのは、この高位結紮術の事です。局所麻酔でできるため日帰りで治療できますが、再発がとても多い事がわかっています。再発を防ぐために、同時に硬化療法を行ったり、しばる場所を増やしたりする場合もありますが、治療効果はストリッピング手術には及びません。
これに対し、私たちは2000年に特殊な局所麻酔によるストリッピング手術法を開発し、手術を行っています。この局所麻酔はTLA麻酔といい、通常の10分の1の濃度の麻酔薬を使用して、足の表面だけを麻酔します。そのため、手術が終わってすぐにご自分で歩いて帰宅していただくことができます。さらに、“クラインポンプ”というTLA麻酔専用の器具を導入して、よりスムーズで痛みのない治療を行っています。TLA麻酔によるストリッピング手術は、保険診療で治療ができます。私たちはTLA麻酔によるストリッピング手術の普及に努め、今では、全国の病院で広く行われるようになりました。
クラインポンプ
クラインポンプ
ストリッパー
ストリッパー
ストリッピング手術をすれば静脈瘤は治るのでしょうか?実は、患者さんが気にしている足のコブはこれだけでは完全になくすことはできません。ストリッピング手術は、外から見えない太ももの静脈を治療する方法です。しかし、足のコブは曲がりくねった血管なので、ストリッピング手術に使うまっすぐな器具を入れる事ができません。そのため、以前は、大きな傷を何箇所もつけて静脈瘤をはさみで取り除いていました。しかし、これでは足が傷だらけになってしまい、静脈瘤が治っても患者さんの満足度は低くなってしまいます。
スタブ・アバルジョン法(Stab avulsion)は、非常に小さい傷(1-3mm)で特殊な器具を使って静脈瘤を切除する方法です。傷が小さいため縫う必要がなく、ほとんど跡が残りません。ストリッピング手術とこの方法を組み合わせることによって、初めて静脈瘤をきれいに治療することができます。
当クリニックでは、年齢や重症度に関係なくほぼすべての方が日帰りストリッピング手術を行うことができ、入院は必要ありません。手術時間は平均50分です。手術が終わったら、そのままご自分で歩いて帰宅していただき、その日から普通に日常生活を送ることができます。事務仕事であれば翌日から、肉体労働の場合は数日後から仕事に復帰できます。傷は溶ける糸で内側から縫いますので抜糸はなく、2日後からシャワーを浴びていただくことができます。
※手術の翌日が1日後です。
※あくまでも目安です。手術後の経過によって日数は前後します。
下肢静脈瘤の各種治療の比較 | ||||
日帰り手術 | 治療効果 | 日常生活への復帰 | 保険適応 | |
弾性ストッキング | ー | × | ー | 一部適応(注1) |
硬化療法(日帰り治療) | ◎ | △ | ◎ | 適応 |
高位結紮術(日帰り治療) | ◯ | △ | ◯ | 適応 |
ストリッピング手術 | × | ◎ | × | 適応 |
TLA麻酔下ストリッピング手術 | ◯ | ◎ | ◯ | 適応 |
レーザー治療 | ◯ | ◎ | ◎ | 適応 |
当院で行っている治療 | (注1)癌の手術後のリンパ浮腫、入院中の深部静脈血栓症予防は適応 |